YouTube CEOを巻き込み右派と左派がバトル!許される表現の範囲は?

YouTuberニュース

6月上旬からYouTuberの間で議論されていた出来事を紹介します。主な登場人物は、コメンテーター兼コメディアンのスティーブン・クラウダー(Steven Crowder)とVoxの記者をしているカルロス・マザ(Carlos Maza)です。

スティーブン(左)とカルロス(右)

この二人は対照的な人物です。スティーブンは右派のYouTuberでLouder with Crowderという番組(ポッドキャスト)を投稿しています。『レイトショー』1が左派目線で政治を扱うように、スティーブンは右派目線でニュースを扱っています。

カルロス・マザはゲイで、記者をしているVoxは左派系メディアです。ツイッターの名前はgaywonk(なよなよゲイ)です。

ことの発端

こちらはカルロスが長年スティーブンに嫌がらせをされてきたと訴えたツイートです。

スティーブンが動画で個人攻撃を繰り返してきたせいで、スティーブンの視聴者がカルロスを攻撃してきたようです。カルロスはYouTube運営にスティーブンのヘイトスピーチを容認する気なのか?と対応を迫ります。

YouTubeの発表

批判を受け、YouTubeは対応を発表しました。

6月5日発表:当該のチャンネルを収益不可2としました。悪質な行為を繰り返し、社会に危害を加えたためYouTubeの規約に違反していると判断しました(最初の発表では、スティーブンが売り出している物販へのリンクを消せば収益可能となると書かれていましたが、変更されたようです)。

さらにこちらの投稿で、収益不可にはしたが動画の削除はしなかった理由を説明しています。

みなさんが同意してくれるとは限りません。対処が不十分だという意見もあるでしょうし、やりすぎという意見もあるでしょう。不快な動画をそのまま配信しているのは、YouTube運営がいじめ、卑しめ、人を排除し無視するような行いを擁護していると受け取られるかもしれません。

もし、攻撃的な表現を含む動画を全て削除してしまったら貴重な発言の場を失いかねません。人々が声をあげ、物語を語り、権力に疑問の声をあげ、批判的に政治の討論をする場を失ってしまうのです。

Not everyone will agree with the calls we make — some will say we haven’t done enough; others will say we’ve gone too far. And, sometimes, a decision to leave an offensive video on the site will look like us defending people who have used their platforms and audiences to bully, demean, marginalize or ignore others. If we were to take all potentially offensive content down, we’d be losing valuable speech — speech that allows people everywhere to raise their voices, tell their stories, question those in power, and participate in the critical cultural and political conversations of our day.

他者を侮辱するような内容が含まれていても、動画の削除はしないようです。

CEOスーザンの回答

6月10日、Codeカンファレンスで登壇したスーザン・ウォシッキーはLGBTQ+の人々に謝罪しました。

YouTube CEO Susan Wojcicki | Full interview | Code 2019

スーザンは過激な表現を含むスティーブンのチャンネルを配信停止処分にしていない理由を述べています。

抄訳:ラップの歌詞や深夜番組には人種的中傷や性差別的表現が含まれる。スティーブンの動画に規制をかけるなら、他の動画にも同様に規制をかけなくてはならない。スティーブンの動画を見たが、悪意ある攻撃が目的とは受け取らなかった。

スーザンは自分に向けられた殺害予告を投稿したアカウントも収益不可にしたが、チャンネル削除はしていないと述べています。

議論の末

カルロスはYouTubeの対応に納得していません。

こちらはカルロスの意見に同調している動画です。YouTubeを批判しています。

How YouTube Allows Harassment On Its Site

スティーブンはヘイトスピーチについて街頭で議論しています。(Google社前で)

こちらはスティーブンの動画です。私企業であるYouTubeに検閲の自由がある恐ろしさを話しています。

Change My Mind Google Edition: Hate Speech Q&A | Louder With Crowder

双方譲らず、今回の件に関して落としどころがなかなか見つからないようです。コメディアンのジョー・ローガン(Joe Rogan)のポッドキャストのゲストだったNaval Ravikantの意見を紹介します。

Why Science Got So Political and What to Do About It

動画6分40秒から。

何か規則を作ったら、それを10年間自分と全く逆の意見を持つ人が運営すると思ってみましょう。それでも安心できるならよい規則です。

ジョン・ロールズの「無知のヴェール」3と似た考え方ですね。

今のYouTubeの仕組みはとても不透明でNaval Ravikantの言うよい規則の域に達していないから起こった論争のように思います。

スティーブンは追放まではされませんでしたが、過去には追放された人もいます。YouTubeを今まで追放されたのはどのような人たちだったでしょうか?こちらの記事で紹介しています。

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  1. アメリカのテレビ局CBSの番組。司会のスティーヴン・コルベアは左派の観点から政治を風刺的に取り上げることが多い。
  2. 収益不可(demonetize)とは広告収入が得られないようにすること。
  3. 「無知のヴェール」とは何が社会における正義かを判断するための思考実験。「これからあなたはある社会で生まれることになっているが、豊かな家に生まれるか貧しい家に生まれるか、どの民族として生まれるかはまだわからないとする。このとき、あなたはこの社会がどのような社会(たとえば平等的社会や差別的社会)であってほしいか?」という問いへの答えから社会全体にとっての正義が見いだせるとロールズは提案した。
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