有権者登録って何?テイラー・スウィフトも声を上げたアメリカの政治制度

社会・政治

2020年はアメリカでは国政選挙の年です。前の国政選挙の年、2018年の中間選挙前に、テイラー・スウィフトが若者たちに有権者登録を呼びかけたニュースが話題になりました。

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有権者登録とは何でしょうか?

アメリカで投票するため必要なのが有権者登録です。この制度の背景には何があるのか、この制度は今のアメリカ社会にどのような影響を及ぼしているのか、テイラーはなぜ若者たちに有権者登録を呼びかけたのか、それを動画で見てみましょう。

有権者登録とは?

日本では18歳以上で日本国籍があれば、特別な登録をしなくても投票できます1。しかし、アメリカでは事情が違います。有権者登録(voter registration)をしなければ投票できません2。特に初めて選挙権を得た人は未登録なので、登録が必要です。これがテイラーが若い人たちに呼びかけていた理由です。

こちらのロサンゼルス郡、カリフォルニア州のサイトでは、有権者登録の方法が日本語で説明されています。英語・スペイン語以外に、中国語・タガログ語・ヒンディー語・日本語・クメール語・韓国語・ベトナム語・タイ語の説明が用意されています。

有権者登録

有権者登録を呼びかける米国政府公式チャンネル

チャンネルはUSAgov、登録者数は(たったの!)7170人ですが、正真正銘の米国政府の公式チャンネルです。

Check Your Voter Registration

動画は、有権者登録の確認を促しています。数年前に有権者登録して、投票してきたとしても、再登録が必要になることがあります。引っ越した有権者や、地域によってはしばらく投票していない有権者の登録を抹消するからです。それ以外の有権者を間違って抹消することもあるようです3

有権者登録が有効かどうかは、ウェブサイトで確認できます。引っ越しや改名で再登録が必要になることもあります。

投票当日の登録はできません。事前登録が必要です。

有権者登録はオンラインや郵送でもできますし、運転免許を取り扱う車両部門(自動車管理局、DMV)などでも行えます。このDMVは対応が大変スピーディーで窓口の待ち時間がとても短く、行ったことのある人が「二度と行きたくない」と口を揃えて語るすばらしい役所です。ディズニーの映画『ズートピア』では職員は全員(ミユビ)ナマケモノで、大変リアルだと言われていました。

ロサンゼルス郡の「よくある質問」のページには「車両部門(DMV)で登録しましたが、郡から登録されていないと言われるのはなぜですか?」という質問があります。回答は、必要事項を記入し忘れる人が多いから、です。『ズートピア』を観ているとナマケモノを職員として雇っているのが理由ではないかという気がしてくるのですが……

投票権の歴史

もっと深刻な背景があると語っているのが、こちらのアメリカにおける投票権の歴史の動画です(2013年公開)。チャンネルはThe New York Times、登録者数247万人です。

A History of Voting Rights | The New York Times

1865年、リンカーン大統領の政府はアフリカ系住民にも投票権を(制限付きで)与えましたが、公民権運動までは公然たる差別が続きました。1965年にようやく人種で投票権を制限することが禁じられました。ですが、2013年に最高裁はこの条項を無効とする判決を下しました。

有権者登録はこのような状況の中で、一部の人々の投票を妨げる道具として使われてきました。

こちらのページによれば、南北戦争後の時期には有権者登録は戸別訪問で行われており、意図的に、貧しい人々や政党にとって都合のよくない人を排除できたと説明されています。

The Exclusionary History of Voter Registration
In the first presidential election, only white, land-owning men were allowed to vote—and some founding fathers wanted to keep it that way.

社会的影響

チャンネルはFUSION、登録者数32.5万人です。動画は2016年に公開されました。

On National Voter Registration Day We Look at America's Voting Problem

動画では、有権者登録をしなければ投票ができないせいで、アメリカは投票率が下がっていると説明されています。成人したアメリカ国民で有権者登録しているのは65%だけです。重罪を犯した人は、刑期を終えても有権者登録できない州もあります。

動画ではアメリカで投票率を下げているほかの要因も説明されています。多くの国では投票日は週末ですが、アメリカでは火曜日です(国政選挙は11月の最初の月曜日の翌火曜日)。政府をそもそも信用していないので投票しない人も多いという話も紹介されています。

こちらのVoxの動画によれば、投票していない有権者の登録を抹消するのは2018年時点でオレゴン州、オクラホマ州、ジョージア州、オハイオ州、ウェストバージニア州、ペンシルベニア州です。2014年から2016年にかけて、1600万人の有権者が抹消されています。これは2006年から2008年にかけての1200万人より400万人多い数字です。

Why American voter registrations are disappearing

この間、何があったのでしょうか? 州議会の多くは2009年時点では民主党が多数派でしたが、2018年には共和党が多数を占める州議会が多くなっています。共和党は不正投票を防ぐことを目的に有権者登録を厳格化しました。

ただし、実際には不正投票が行われていた形跡はほとんどないようです。ある研究では2000年から2014年にかけて不正投票が疑われた例は35件でした。もちろん、これはその間に国政選挙で投じられたのべ8億票からすればごくわずかです。

有権者登録の厳格化の真の目的は(引っ越しが多く、間違って二重登録扱いされ抹消されやすい)マイノリティを投票から排除することだった、と動画では説明されています。ジョージア州で、登録が保留になったうち70%がアフリカ系住民でした(住民のうちアフリカ系が占める割合は30%程度)。マイノリティは民主党支持の傾向があるため、有権者登録の厳格化は共和党に有利な政策でした。

最高裁が人種による投票権の制限を禁ずる条項を無効としたのは有権者登録の厳格化が進みつつあった2013年でした。上のNow York Timesの動画もそれを受けて作られたものです。

Taylor Swift's Political Post Leads to Voter Registration Surge | THR News

これがテイラー・スウィフトが共和党の候補を支持しないことを表明し、若い人たちに有権者登録と投票を呼びかけていた背景でした。テイラーの呼びかけの後の24時間で記録的な人数が有権者登録したと報道されています。

  1. 正確には、選挙人名簿に自動的に登録されるので手続きが必要ない。選挙人名簿に登録されるのは引っ越してから3ヶ月後なので、それまで引っ越し後の地域では投票できない。
  2. 州によっては半自動的に登録されるところもある。
  3. 同姓同名の人が二人いる場合、二重登録扱いして抹消してしまうことがある。
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