米国でNetflix『キューティーズ』に非難集中?監督の意図・フランス人の意見は?ネタバレあり

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Netflixで公開中の映画『キューティーズ(Cuties/Mignonnes)』のネタバレ記事です。『キューティーズ』は、予告編やポスターが公開されて以来ソーシャルメディアで論争をよんでいました。映画のテーマが非常に不適切だというのが理由です。

監督のインタビュー

2020年9月9日に投稿された『キューティーズ』監督のマイムナ・ドゥクレ(Maïmouna Doucouré)のインタビュー動画です。映画のメッセージや題材について話しています。

Why I Made Cuties | Maïmouna Doucouré Interview | Netflix

監督によると、主人公は3つの世界を体験しているそうです。従来のムスリムの価値観で生きる世界、現代フランス・西洋の価値観で生きる世界、そしてソーシャルメディア上の世界です。『キューティーズ』は現代の子どもたちが経験する社会問題を扱っています。

主人公のアミーはムスリムの家に生まれた11歳の女の子です。アミーは移民二世で、母親と2人の弟とパリ都市圏の低所得地域のアパルトマンで暮らしています。父親はセネガルにおり、もうすぐ2人目の妻を迎え入れるところです。アミーの母親は熱心なムスリムですが、アミーは宗教についてあまりわかっていません。

一方で、アミーはフランス社会で暮らす普通の女の子です。大人びた服装やダンスをする同級生に憧れを抱き、どうにかして仲間に入れてもらおうとします。写真は今風に加工してソーシャルメディアに投稿します。投稿したダンスの動画にいいねが付くと友達と大喜びしています。

アミーが写真を投稿するソーシャルメディアは、女性の性的な魅力が誇示される世界です。


このようなソーシャルメディアの投稿を見ている子どもたちは意味もわからず真似をしています。アミーと友達は過激なダンスを練習しますが、その過激さもよくわかっていないようです。大人のきれいなお姉さんがしていることなら何でもあこがれてしまう、このぐらいの少女にはありがちな心理です。監督はその危険性を指摘しています。また、性的な魅力を発散しないと評価されないのは、宗教で抑圧するのとは方向が違ってもやはり女性への抑圧ではないかとも問題提起しています。

監督は2つの文化の狭間で育った実体験に基づいてアミーのキャラクターを描いています。セネガル人としての生き方も、現代フランス・西洋的文化の生き方も見て育った監督ならではのメッセージが込められています。監督は「1時間半の映画を視聴して、11歳の気持ちを体験してほしい。」と話しています。確かに、自分が11歳だったころのことを思い出す映画です。自分が何をしているのかすらわかっていなかったけれど、大人が思っているほど悩みがなかったわけではありません。その頃の気持ちを思い出した気がします。監督は思春期の入り口の少女をリアルに描きたかったそうです。

念願だったダンス大会に出場したアミーですが、ダンスの途中で呆然として泣き出してしまいます。このシーンが監督のメッセージではないかと思います。いくつもの文化の間に生きる少女は、その中からどれか一つを選ぶのではなくバランスを見つけていくのでしょう。ラストシーンでアミーは、子どもらしい服を着て遊んでいます。映画の結論は、常識的なものです。

しかし、この映画の公式ポスターや概要が投稿された時点でTwitter上で批判の嵐が巻き起こっていました。

Cuties | Official Trailer | Netflix

「子どもを性的に描写している」、「これはチャイルド・▼ルノだ」、「子どもがトゥワークをしているなんて不適切だ」といった批判です。このNetflixの予告編動画は執筆時点で約4.2万の高評価に対して約180万の低評価がついています。高評価率はたったの2%です1

映画が公開されるとYouTuberもレビューを投稿して非難しています。映画公開日のTwitterでは“Cancel Netflix”がトレンド入りしていました。Netflixを解約したという声も飛び出しています。

批判の声

まず英語圏、主として米国からのツイートを紹介します。批判的な声が多く、好意的な声はほとんど見つかりません。

 

 

映画やNetflixの批判だけではなく、政治的な主張も交えて映画を批判する人が出てきました。

政治家で大統領選予備選に出たこともあるトゥルシー・ギャバードです。

 

『キューティーズ』をNetflixから消そうとする署名活動も行われています。

英語のツイートでは、批判的な声が圧倒的です。11歳の少女が性的なダンスをする動画クリップが拡散され、見た人が憤激したようです。しかし、多くの人が部分的に切り取られた動画しか見ず、映画を観ずに先入観で批判しているようでした。そのため的外れな意見が多々見受けられました。

フランコフォンの意見は?

では、映画が制作されたフランス語圏の意見はどうでしょうか。『キューティーズ』のフランス語タイトルは“Mignonnes”(ミニョンヌ)ですが、『キューティーズ』と『ミニョンヌ』はまるで別の映画のようです。

アメリカで「この映画は少女を性的に搾取している」と非難されているのはおかしい、この映画は少女の性的搾取を批判しているのだから、という理屈です。確かに、過酷な訓練や非人間的な戦場を描かない『フルメタル・ジャケット』は想像できません。

こちらも同様の意見です。

 

Netflixの広告戦略に問題があったという指摘もありました。

 

うがった見方もあります。

社会問題を扱うとは

映画『キューティーズ』で一番問題になる点は、監督のメッセージを伝えるためにここまで性的な描写を含める必要があったのか?です。人種差別問題やジェノサイドをテーマにした映画では、過激な表現が含まれることがあります。視聴者に不快感を抱かせ、メッセージを明確にするために含まれているものです。『キューティーズ』も同様の表現であるはずですが、Twitterでは「これは過剰な表現だ、犯罪だ」と断言されています。実際に起こっている社会問題を扱う難しさを感じます。

仏語圏の声と英語圏の声はかなり違っています。アメリカではたまたま広告戦略の間違いから炎上してしまったのでしょうか? それとも、アメリカでは炎上するしかない内容だったのでしょうか? 予告編の評価や英語圏のTwitterの反応からは、この映画を観ることすら許さない空気が感じられます2。まともな批評が成立しそうにありません3

政治的分断が進んでいる現代アメリカでも、子供の性的搾取は誰でも一致して批判します4。批判しないとそれだけで悪人だとみなされるようです。しかし、11歳の過激なダンスはだめでも、十代後半ならば一転して許容され、それどころか歓迎されます。不思議な時代の空気を反映した炎上騒動です。

  1. この率はWikipediaの「YouTubeで低評価が多くついた動画一覧」で堂々の第1位である。低評価の数は第48位。
  2. 紹介したツイートの中にもあるが、子供の性的搾取についてのほとんど陰謀論的な意見も多かった。
  3. 好意的な意見のように見えるものはかなりの割合で、「僕は小さい女の子が大好き! この映画最高!」のような悪ふざけだった。
  4. 本サイトで取り上げた事件でも、未成年を性的に誘った疑惑の浮上したYouTuberの社会的生命がほとんど終わりかけたことがあった。殺人よりも重罪であるかのようだ。
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