アメリカ大統領選候補者討論会へのTwitterの反応 内向きアピールだけの史上最低討論会?

社会・政治

2020年は米国大統領選挙の年です。投票日は2020年11月3日です。現地時間2020年9月29日に行われた第一回の大統領候補者討論会へのTwitterの反応をお伝えします。

討論会はオハイオ州クリーブランドで行われました。時間は90分、コロナ下の今年は特例として来場者は80名に制限され、拍手やブーイングもなし、候補者間の握手も行われません。候補者が二人とも高齢ということもあり、どのような発言が飛び出すのかが注目されていました。司会者はFOXニュースのクリス・ウォレスが務めています。

トランプ大統領の主観では、このような心境だったようです。

というのも、ウォレス氏は(保守的で親トランプ政権の)FOXニュースでは珍しくトランプ大統領に批判的な人物だからです。

討論会の様子は日本でも報道されていますが、アメリカでの受け止め方はどうなのか、Twitterから一部の声を紹介します。

まとめるとひどい内容だったというのがTwitterの総意のようです。ですので、おじいさん二人のひどい討論を見る前に、どうぞアニメ風の美少年になった二人を見てリラックスしてください。

念のため説明すると、左の目つきが悪いのがトランプ大統領、右の頭髪が寂しいのがバイデン元副大統領です。

討論会の全内容はこちらのC-SPANの動画に収められています。

First 2020 Presidential Debate between Donald Trump and Joe Biden

最高裁判事

2020年9月、最高裁のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が死去しました。最高裁判事に空席ができたのでトランプ政権は後任を指命しようとしています。

最高裁判事は法律の違憲審査をすることで社会に大きな影響を与えます。米国の制度では最高裁判事は終身職なので議員や大統領よりも長く影響力を保ちます。

米国では右派は妊娠中絶の禁止を主張します。そのため、トランプ政権が次の最高裁判事を指名すると中絶が違法化される可能性があると指摘されています。これが左派がトランプ政権による指名に反発する一つの理由です。

医療保険制度

アメリカでは医療保険は日本のような皆保険ではありません。保険料の高い民間保険が多く、保険に入っていても高額な医療費を払えず破産することもあります。歴代政権の重要課題だったので今回の討論会でも話題になりました。

討論会で「インスリンを水みたいに安くした」と発言したトランプ大統領。本当でしょうか?

薬価や新型コロナウイルス対策について経済を優先するべきか、人命を優先するべきか(医療崩壊を回避するべきか)が議論されました。

経済格差

経済格差は大きな問題です。新型コロナウイルスの拡大で低賃金労働者がますます苦しい立場に立たされる中、富裕層は打撃が少ないと言われています1。バイデン元副大統領はこの点を突きました。

また、2020年9月下旬、New York Timesがスクープしたトランプ大統領の過去の納税記録も話題になりました。過去の損失の繰り越しでほとんど所得税を払っていなかったため、反トランプ陣営は盛んにこの点を攻撃しています。

ここでトランプ大統領から爆弾発言が飛び出します。「税金は払いたくないし、バカじゃないかぎり払わないものだ。」という発言です。

もちろん、損益通算で節税するのは完全に合法なので、払っていなかったこと自体は問題ありません。ただし、天才的なビジネスマンであるという触れ込みで大統領になった人物が大きな損失を出して所得税を払っていなかったのは奇怪です。また、歴代大統領は汚職のない証拠として納税記録を開示してきたので、一人だけ開示を拒んできたトランプ大統領の行動は公職に就く者として疑問符がつきます。

司会者やバイデン元副大統領から「納税証明書を開示してください」と要求がありましたが、トランプ大統領は「私は数億円納税したこともある」と話してかわしています。

トランプ大統領の支持者からは、「討論会で納税記録なんてどうでもいいことを取り上げるな」という声が多く出ていました。

人種差別について

近年、人種差別に対する抗議の声が強まっています。その一環で、白人がこれまで有利な立場にあったことを自覚しよう、と言われるようになりました。また、相手がどの人種であるかによって行動を変え、無意識的に特定の人種に差別的な行動をとってしまうことに気づこう、という動きもあります。これを“racial sensitivity training”と言います。

このトランプ大統領の発言は、最近の人種差別への抗議活動にうんざりしている白人支持者たちへのメッセージです。何でも人種差別だと言われて息苦しい、むしろ今や白人がほかの人種にいじめられているではないか、と感じている支持者たちを喜ばせる発言でした。

さらにこのような発言も飛び出しました。

最近、人種差別に反対する声が強まっているので、人種差別に反対するふりぐらいはするのが普通の大統領候補ですが、トランプ大統領は違いました。やはり支持者へ強いメッセージを発しています。

これに対して、反対派からはトランプ大統領への激しい批判が出ています3

トランプ大統領は支持層の特徴をよく把握しているようです。彼らに語りかけるような発言をたびたびしていました。

大統領選挙

今回の選挙は、新型コロナウイルスの拡大を防止するため、郵便投票を拡充する方針です。郵便投票は国土の広いアメリカではこれまでも行われてきました。しかしトランプ大統領は、郵便投票は不正の温床だとして攻撃しています。そのため郵便投票についても討論されました。

日本では成人した日本国民に自動的に投票権が与えられます。しかし、日本と違ってアメリカでは、成人したアメリカ国民でも自動的に投票権は与えられません。有権者登録の手続きをする必要があります。近年では、右派は有権者登録の手続きの厳格化を指向し、左派は緩和を指向してきました。右派は不正投票を懸念し、左派は貧困層が登録しに行けないことを懸念しています。

有権者登録制度についてはこちらの記事をごらんください。

有権者登録って何?テイラー・スウィフトも声を上げたアメリカの政治制度
2020年はアメリカでは国政選挙の年です。前の国政選挙の年、2018年の中間選挙前に、テイラー・スウィフトが若者たちに有権者登録を呼びかけたニュースが話題になりました。 有権者登録とは何でしょうか? アメリカで投票するた...

トランプ大統領は、右派の主張する郵便投票への疑念を繰り返しました。不正の疑いがあり、集計には何ヶ月もかかるかもしれない、と示唆します。

さらに、支持者に向けて、投票所を監視してくれと発言しました4

支持者にとっては大統領に期待されていると感じられる発言かもしれません。

非難の応酬

以上の話題のほか、環境政策や経済政策、新型コロナウイルスなども討論会では取り上げられました。

討論会というと、双方が自らの立場を相手に伝えて議論を尽くすイメージがあります。しかし、今回の討論会は議論というよりは悪口の投げ合い、子供のけんかのようだという声が多く見られました。

たとえば、トランプ大統領がバイデン元副大統領の持ち時間中に口を挟むので司会者に注意されました。

バイデン元副大統領も割り込むトランプ大統領に「黙ってくれんかね」と返しました。

まともに議論が成立していないことが多く、司会者も含めた三人が同時にしゃべっている瞬間もありました。

人々の感想

前代未聞のひどい討論会だったという声もありました。

ジャーナリストたちもさんざんな評価をしています。

これが2020年大統領選だ、という映像ですが、これは……

まともな討論にならなかったのは彼らがアメリカの歴史上稀に見る高齢な候補であることも理由かもしれません。

個人的な感想

以下は個人的な感想です。

ひどい内容だったことには完全に同意します。

強いてよかったところを探すならば、健康不安説が流れていたバイデン元副大統領が特に問題なく討論できた点です。しかし、これはポジティブな話ではなく、ネガティブではなかったというだけです。

バイデン元副大統領は何度かカメラの向こうの聴衆に語りかけるシーンがありましたが、トランプ大統領がカメラを見つめることが少なかったのは意外でした。リアリティスターにしては不慣れな印象がありました。聴衆をあおるのに長けた大統領にとって、客が少なく、拍手喝采の禁じられた今回の討論会はアウェーだったのかもしれません。

しかし、見方を変えれば、コント番組のようであっという間の90分でした。その意味では、次回が楽しみです。しかし政策についてまともに議論が成立しなかったのは腑に落ちません。

討論会にあまり意味がなさそうなのも残念です。おそらく今回の討論を見ても、双方の支持者たちは意見を変えないでしょう。

トランプ大統領は、富裕層および反人種差別運動を苦々しく思っている層に訴える言葉、メディアを信じていない人たちに訴える言葉で語りました。しかしトランプ大統領の言葉は社会保障の強化を求める人々や人種差別に反対する人々の憤激を呼びました。

他方、バイデン元副大統領は全く逆で、人種差別に反対し環境保護を訴えましたが、トランプ大統領の支持者には響かないでしょう。また、環境政策や社会保障については、より左の、バーニー・サンダース支持者にとっては物足りない主張しかしませんでした。

バイデン元副大統領がトランプ大統領を攻撃する材料にした納税記録のスクープも、自派向けのアピールにしかなっていないように見えます。トランプ大統領の支持者にとっては、慣例を破って記録を開示しなかったことも、所得税をほとんど払っていなかったことも問題ではないでしょう。

両候補者とも、内向きのアピールばかりでした。今回の討論会がまともな「討論」にならなかったことは、現代アメリカの政治から議論と共通理解のための土台が失われていることを示しているのかもしれません。

  1. ダウ平均株価は新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだものの、9月上旬には年初の値に戻している。
  2. アンティファは極左過激派。人種差別に抗議するデモで破壊活動に及んでいる集団がアンティファと呼ばれることがある。しかし、逆に白人至上主義者が扇動のためアンティファのふりをして破壊活動をしていることもあるため、正体不明のことが多い。
  3. その後、プラウドボーイズは喜々としてコメントしている。

  4. 一般人が投票所の周りで監視することで何ができるのか不明。あるいは白人の支持者が投票所にいることによる反トランプ派のマイノリティーに対する威嚇効果を期待しているのかもしれない。
  5. 漂白剤を注射すれば新型コロナウイルスを除去できるとトランプ大統領は記者会見で発言したことがある。
  6. Dana BashはCNNの政治記者。
  7. George Robert StephanopoulosはABCのアンカー。
  8. Wolf BlitzerはCNNのリポーター。
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