ミネアポリスから全米へ広がる抗議デモの映像と声 暴動・略奪・警官の暴力・怪しい人影・受け手の責任

社会・政治

2020年5月にミネアポリス、ミネソタ州から始まった抗議デモとそれに伴う騒乱についてTwitterで語られていることをご紹介します。スマホで撮影された様々な映像が出回り、憶測や噂が飛び交っています。何が確かで、何が噂でしかないかをお伝えします。

George Floyd protests: Unrest escalates in demonstrations in more than 30 US cities

本記事では、ツイートで投稿された写真や動画を紹介しますが、時系列や地域別に従って区分されたものではありません。また、暴力的な映像が多数含まれますご注意ください

何が起こっている? きっかけは?

2020年5月25日、ミネアポリスで46歳のアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが警官に取り押さえられ、死亡しました1。アメリカでは無抵抗のアフリカ系住民が警官に取り押さえられ(暴力を受け)死亡する事件がたびたび起こります。問題は、このような事件の後で、警察官がしばしば罪に問われず、免職もされないことです。このような扱いは人種差別的であるとして、近年、明るみに出るたびに抗議デモが発生してきました2

今回も当初フロイドさんを死に至らせた警察官は立件されず、デモが発生しました。

こちらがその警官の自宅前のデモの様子です。この時点で警官は免職されていますが、まだ立件されていませんでした。

元警察官を立件する権限のある郡検事マイク・フリーマンの自宅前でも抗議がされていました。

その後、29日になって立件が決定されました。

抗議デモは当初穏やかなものでしたが、一部で暴動が発生し、ミネアポリスの一部地区は破壊され、略奪が発生しました。抗議デモはニューヨーク州、テキサス州、カリフォルニア州などの数十の主要都市に広がり、5月31日時点で収束していません。

ミネアポリスで抗議デモが集中していたのはミネアポリス警察第3分署の付近です。一部の暴徒化した人々により、第3分署は放火されました。近くの小売り大手ターゲットのLake Street店も略奪を受け、放火されました。放火したのは誰か、なぜか、は明らかではありません。しかし、この店舗の近隣は所得の低い地域で、ターゲットは少し離れた所得の高い地域の顧客を対象としており、以前から近隣住民と軋轢があった、とも指摘されています3。その様子はこちらの地図からもわかります。

現地の様子

こちらのツイートの動画にフロイドさんが亡くなった現場の現在の様子があります。花が手向けられています。

抗議デモが広がるとともに、暴動と略奪が発生しました。略奪の様子を捉えた動画も多数Twitterでは出回っていますが、こちらを紹介します。

トレンチコートの紳士も暴徒化して何かを持ち出しているようです4

略奪は正当化できませんが、ひとたび略奪が始まってしまったのならば、自分も参加しようと思うのは理解できない話ではありません。略奪が発生し始めると多くの店舗が閉まってしまうため、当面物資が手に入る保証がなくなります。誰かに持っていかれてしまう前に自分の取り分を確保しておこうとするのは残念ですが合理的です。

被害を受けた店の中には今回抗議デモの中心になっているマイノリティが経営している店もありました。これまで一生かけて築き上げてきたものを一夜にして失ったと悲しむ姿が映っています。

マイノリティの権利を守ることを要求する活動がマイノリティの生活の基盤を破壊してしまうのは悲しいことです。しかし、このような光景は目新しいものではありません。1992年のロサンゼルス暴動でも、アフリカ系店主が店を破壊され悲しむ姿が報道されていました。

一方で、商店の前に人々が立って破壊を止めようとしている動画も多く見られました。

略奪が起こるなかで、なんとか平和的に抗議デモを進めようとしている人たちも多くいます。ミネアポリスでは地元のボランティアたちが清掃活動をしています。

デモ参加者と警察隊の衝突

ミネアポリスをはじめ各地で抗議デモの規模が大きくなり、暴動が始まると、市警察のみならず州警察、州兵が動員され、暴動の鎮圧が試みられました。治安部隊の車両が多数集結する様子も動画に捉えられています。

こちらは31日のロサンゼルスの様子です。

(2020年6月6日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

現地では混乱も手伝って、平和的デモの参加者が警官に暴行されたり、ときには警官が暴徒に攻撃されたりしています。

催涙ガスやゴム弾がデモ参加者の列に数多く放たれ、多数の人が傷ついています。

こちらの動画は催涙弾の爆発した付近の様子です。多くの人が目や口を押さえています。催涙ガスを浴びた人の顔を牛乳で洗い流していますが、こちらの動画でもその様子が見られます5

このツイートをした人は、この動画の直後、ゴム弾を被弾したそうです。

当たったゴム弾はこのようなものでした。

痛々しい痣になっています。

被害者の女性…?

このような動画が出回っていました。これはミネアポリスのターゲットの店舗が略奪を受けたときに撮影されたものです。この動画に音声はありません。

この動画では、車いすの女性が袋だたきに遭っています。暴徒に暴行されるだけでなく消火剤までも吹きかけられて、非常にかわいそうです。

しかし、この動画については、このような声もあります。

(2020年7月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

そして、こちらが音声付きの動画です。確かに、“She stabbing people”(あの女、人を刺してる)という声が聞こえます。こちらの動画では人々の声の字幕もついています。

(2020年7月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

「被害者」6は刃物を持って、人を刺していたようです。

右派は音声を消した動画を、左派は音声入りの動画を拡散し、それぞれ「黒人の暴力」と「頭のおかしい白人女」として取り上げています。

印象操作?

発信者にとって都合がよいように編集されたり解釈されたりしている動画はこれだけではありません。

こちらのツイートはケイトリン・ベネットが運営する政治サイト「リバティーハングアウト」のものです。

これには同情の声が寄せられるのが当然かと思いきや、反論がありました。

こちらは直前の映像です。

こちらは別の角度から撮影されたものです。確かに人を追い回している様子が見られます。

リバティーハングアウトは極端に右派的な主張で知られているので、ツイートの下には多くの反論が並んでいました。

しかし、彼が自分の店を守ろうとしていたのは間違いないという声もあります。

(2020年7月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

立場によって見方が違い、各人の見方が拡散されるSNSの動画では、何があったのかを確認するのは非常に難しいと感じさせられます。

多くの商店や住宅が放火されていますが、それが誰の手によるものなのかについても論争があります。

暴動・放火が誰の仕業かについては諸説あります。右派はデモ参加者が暴徒化した(というよりも、もともと暴力的な集団が騒いでいた)と捉えたがり、左派は公安警察や白人至上主義者の(マイノリティに罪をなすりつけるための)陰謀だと捉えたがる傾向があります。単に騒ぎを起こしたい人々が他の地域から集まってきている可能性もあります。ここまで紹介した動画やその他の動画には、SNSで興味本位にライブ配信されたものもあります。いずれにせよ、このようなことが起こっているその場では、冷静でいることは難しいでしょう。

荒れる警官や兵士たち

こちらの動画には特に混乱状態や暴力的な状態にあるように見えない人々の列に警察の車両が突っ込んだり、警察官が人々を突き飛ばしたりしている様子がまとめられています。

平和的デモであっても、(差別に反対するなどの)怒りにあふれた人々と対峙する警官のプレッシャーは相当なものだと思われます。このデモが反差別デモというだけでなく、警官の暴力(police brutality)への抗議のデモであることも警官にとってはかなりの負荷になります。そのため、逆に警官による暴力が増えてしまうという面もあるでしょう。するとますますこのような動画が拡散されて抗議デモが膨張していきます。

こちらの動画でも、ロサンゼルス警察が平和的な抗議デモを攻撃する様子が捉えられています。

こちらのニューヨークの女性は警官に取り押さえられ、血を流しています。

(2020年7月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

同じく、ニューヨークの警官が小柄な女性を押し倒す映像です。

こちらの動画では、最初に攻撃を仕掛けたのは警察だとされています。

こちらの動画では警察が無抵抗の男性に催涙スプレーをかけています。

(2020年7月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

夜間外出禁止令が出された後、車を運転していた2人が電気ショックや催涙スプレーを浴びせられ、逮捕されています。アトランタの映像です。

各地で事態の収拾のため夜間外出禁止令が出されています。しかし、緊急発令のため知らずに外出し逮捕されてしまう人や、公然と禁止令を無視して抗議を続ける人、禁止令を意に介さない暴徒が混在しており、混乱が続いています。

このような動画も投稿されています。警官たちが、牛乳を捨て医療品の箱や水をトラックの荷台に乗せています。これらは抗議デモに参加した人々の用意した品でした。

もちろん、医療品はケガをしたときのため、牛乳は催涙ガスに対処するためのものです。これらの物品を没収するのは警察にとってはデモ隊を制圧するための有効な手段です。しかし、このような行動が目撃されているので、警察への不信感が高まっています。様々な破壊活動も警察によるものだという疑いもささやかれています。

こちらの投稿では、ニューヨークには覆面警官がいると主張されています。

警察が抗議デモに連帯を示し、信頼を回復しようという動きもあります。アトランタ、ジョージア州の警察署長エリカ・シールズはデモの現場に赴いて人々と対話しました。このニュースはおおむね好意的に受け止められています。

しかし、一部には疑いの声もあります。

動画の中で署長は「平和的なデモ参加者の中に紛れ込んだ暴徒を見分けるのは難しい。ともかくデモを解散させねばならない。」と語っています。治安の責任者としてはこれ以外にできることがなさそうですが、このツイートを書いた人物は続けて怒りを綴っています。警察への信頼が失われていることを窺わせます。

メディアは信じられないという声もあります。馴染みの情報源一つに頼るより、多くの情報に触れて真相を探る必要がありそうです。

29日、衝撃的な映像がCNNで放送されました。ミネアポリスで中継中に現地のレポーターが逮捕されたのです。

しかし、すぐに釈放され、復帰できました。レポーター本人のツイートです。

これがCNNによるスタンドプレーや、やらせだと主張する声も出ていますが、現時点では決定的な根拠はないようです。

黒ずくめの集団

混乱に紛れて、地元住民でもなく、デモ参加者でもなく、警察部隊でもない人々がうろついているという情報があります。こちらの動画では黒ずくめの服を着て目元と口元を隠した白人女たちがスプレーで店舗に落書きをしています。なぜそのような行為をしているのか尋ねても、まともに答えようとしません。

これは抗議活動ではなさそうです。このような破壊活動をしている彼らの目的は不明です。面白半分に破壊活動をしているようにも見えます。

商業施設の窓を割っている集団もいます。こちらの動画では、破壊行為を目の当たりにしてデモの参加者たちが叫び声を上げ、破壊行為を制止しようとしています。

このような人々の出現を受けて、「衝突を引き起こそうとしている偽のデモ参加者に注意」という声が広がりました。

こちらはオークランド、カリフォルニア州の様子です。

こちらも破壊活動をしている謎の白人たちです。

(2020年6月6日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

こちらも破壊活動をしている謎の白人たちですが、映画の『ジョーカー』みたいなことをしたいのか、この混乱を楽しんでいるのか、と語られています。

この人物も破壊行為をしています。同じように黒ずくめでハンマーを持っています。

(2020年6月6日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

こちらはミネアポリスで見つかった人物です。この人物は黒ずくめに黒い傘まで差していて、非常に怪しい風体です。

破壊行為をしたのは警官ではないかという指摘もありますが、これについてはフェイクニュースだという指摘もあります。

(2020年7月5日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

彼らの正体については極左のANTIFAであるとする声と極右の白人至上主義者だとする声、また警察・治安当局だとする声があります。何者かは不明ですが、デモ参加者とは別に、少なくとも混乱をあおり立てたいと思っている人々がいるようです。破壊を楽しんでいるようにも見えます。

こちらの記事によれば31日にミネアポリスとセントポールで逮捕されたうちの80%がミネソタ州の外から来た人でした。

デンバーのデモ隊に車で突っ込んだ女

デモ隊への攻撃は警官隊によるものがほとんどですが、一部は無関係な民間人によるものです。

デンバー、コロラド州ではジョージ・フロイドさんの死に抗議して行進している人々に車が突っ込みました。列に突っ込んだだけでなく、その後、逃げていく人々を車で追っています。

車を運転していたのはジェニファー・ワトソンと報道されています。彼女はJP Watson Interiorsの経営者でした(現在、会社のサイトは消えている模様)。

(2020年6月6日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

個人が特定されています。

彼女がなぜこのような行動に出たのかは明らかになっていません。

弓と矢を持ってデモ参加者を狙う男

こちらの動画では白人男性がデモ参加者に矢を向けている様子を見ることができます。

この人物がどのようなつもりで弓矢をデモ参加者に向けたのかはわかりませんが、その後の取材では彼が「被害者」ということになっています。

抗議活動のただ中で人々を攻撃しようとした二人、ということで、並べています。彼らは何をしたかったのでしょうか。彼らも家にいればけがをせずに済んだはずですが。

アーミッシュと魔女とアノニマス

こちらはアーミッシュの活動の様子です。アーミッシュはもともと政治的活動から距離を置くことで知られていますが、今回は声を上げています。

アーミッシュだけでなく、魔女(?)やアノニマスも声を上げています。

受け手の責任

以上の動画はいずれもショッキングなものばかりです。デモの多くは平和的で、警察の対応もさほど攻撃的ではない場合も多くあると思われますが、拡散されているのは目を引く動画ばかりになっています。

破壊行為や暴力があるのは間違いありません。しかし、その「犯人」が誰かについては論争に決着がつかないかもしれません。動画が自分に都合のよい主張を補強するために使われ、結果として疑心暗鬼を深める道具になってしまっています。

映像から見えてくるのは極限的な状況です。略奪の現場では誰しも略奪に加わらざるを得ず、最前線に立った警察官は目の前のデモ参加者を殴らずにいられません。怒りに支配された場ではそれは必然です。怒りをあおり立てる人々がいるならばなおさらです。

現場にいる人には冷静になる余裕がなくても、現場から離れたところにいる人は怒りに支配されず立ち止まって考える必要があります。この怒りの原因である差別を温存し、増幅する社会制度は変えていく必要があるでしょう。これはアメリカだけの問題ではありません。また、安全圏に身を置く受け手が、自分にとって居心地のよい映像、都合のよいメッセージだけを受け取っていないか、よく考える必要があります。

【2020年6月2日】本文を加筆訂正しました。

  1. 警官は店から偽札が使われたとの通報を受けて現場に到着した。警官はフロイドさんをうつぶせにさせて首の後ろを約9分間膝で押さえ続けた。偽札を使ったとしても、死ぬのは釣り合わない。
  2. 殺人に至らずとも、白人警官による黒人への暴力が見逃されがちだと指摘されている。
  3. 彼は当初、アイロン台などを持って店内を物色していたようだが、コートの下に隠せる程度の盗みをするにとどめたようだ。

  4. しかし牛乳が最適ではない、という声もある。

    おそらくチリ暴動の経験だと思われる。

  5. 彼女は別の動画ではジェニファーと呼ばれており、歩くこともできるらしく、30歳だという投稿もあるが、全く未確認の情報である。確かに動画のこのコマでは、歩けるかどうかはともかく、脚は動いている。

    (2020年6月1日:削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。)

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