テイラー・スウィフトが2018年の選挙で地元テネシー州の民主党候補（上院ではフィル・ブレデセン、下院ではジム・クーパー）に投票することを発表しました。上院の現職は共和党マーシャ・ブラックバーンです。
テイラーが明らかにしたのは中間選挙の投票先です。中間選挙はアメリカの国政選挙（上下両院の議員を選びます）で、4年に一度の大統領選挙の中間の年に行われるので中間選挙と呼ばれます。
論争が巻き起こっています。なぜでしょう？
沈黙の歌姫
テイラーは政治的な事柄に関して長い間沈黙を守ってきました。
オルトライト（ここ数年目立つようになってきた右派）のブログサイトに「白人女性の理想」と崇め立てられ、白人至上主義の象徴としてコラ写真を作られ（ヒトラーの発言がテイラーの写真の上に貼付けてある、ヒトラーと並んでいるなど）、トランプに投票したとウワサされても黙っていました。
トランプに投票したというウワサはオルトライトや一部トランプ支持者が言っているだけのウワサで確かなものではありません。テイラーは2017年末の誕生日に「これ以上ないほど幸せな年だった」と、Instagramに投稿したのですが、それはトランプが大統領に就任したからだというのがウワサの根拠です。想像力が逞しすぎますね。
とはいえ、このようなウワサをテイラーが直接否定することはなかったので、ファンの中でもトランプ大統領を支持していない人は複雑な思いを感じていました。（テイラーは弁護士を通してコラ写真の削除を要請したり、ブログ運営者に対し訴訟を起こそうとした動きはありましたが……）
インスタグラムの投稿
11月に中間選挙を控え、有権者登録の締め切りが近づいています。（日本では何もしなくても投票所の案内が自動的に送られてきますが、アメリカでは投票するために事前の登録が必要です。）
性的暴行疑惑で論争を起こしたブレット・カバノーが最高裁判事に就任した数時間後、テイラーは自身のInstagramで有権者登録の呼びかけを行います。
中間選挙では民主党支持であること、現職のマーシャ・ブラックバーン議員の政治的見解には同意できないことをはっきり述べています。LGBTQの人権擁護に賛成し、制度的人種差別に不快感を示しています。
For a lot of us, we may never find a candidate or party with whom we agree 100% on every issue, but we have to vote anyway. So many intelligent, thoughtful, self-possessed people have turned 18 in the past two years and now have the right and privilege to make their vote count. But first you need to register, which is quick and easy to do. October 9th is the LAST DAY to register to vote in the state of TN. Go to vote.org and you can find all the info. Happy Voting!
テネシー州は共和党が優勢の保守的な地域で（2016年の大統領選でも共和党トランプが勝利）、連邦下院9議席のうち現在7議席が共和党、2議席を民主党が占めています。上院議員（定数2）は共和党が占めています。11月6日の選挙では、米下院で民主党が過半数を取れるかが注目されています。
芸能人の政治への影響力は？
テイラーのInstagram投稿はどれくらいの影響力があったのでしょう？
Vote.orgによるとテイラーのInstagram投稿後24時間で6万5千人が新たに有権者登録をしたそうです。比較として9月は全米で19万人が有権者登録を済ませています。テイラーの影響力の凄さが伺えます。10月9日がテネシー州の登録締め切り日でした。
登録が締め切り直前になった人が多かっただけでは？と思う人が多いかもしれませんね。そうではないのです。具体的な数字をみてみましょう。
Vote.orgを介してテネシー州で有権者登録をした人は9月で2811名、テイラーがInstagram投稿した後36時間で2144名でした。さらにテイラーが呼びかけを行ってから有権者登録したうち、42%が18歳から24歳でした。この世代が多かったということは、テイラーの影響が強かったということなのです。
上記内容は独立系ニュースメディアTYTの動画で見られます。
Twitterでの反応を少し紹介します。
まず、テイラーの表明を歓迎する側のtweetです。
Refinery29のニュース、政治欄の主任編集者
（2024年4月14日：削除されたツイートをキャプチャ画像で置き換えました。）
次は、テイラーの表明の陰にうさんくさいものがあると言っているツイートです。
Swift was under vicious attack for being a pretty white girl, so her agent told her to endorse a Democrat. https://t.co/c2aitQDhVC
— Ann Coulter (@AnnCoulter) 2018年10月8日
というツイートに対し、保守コメンテーターのアナ・コールターは
とツイートしています。
芸能人のお墨付きであったとしても候補者の勝利が保証されたわけではありません。
2016年のアメリカ大統領選では、ヒラリー候補にJay-ZとBeyoncé夫妻はオハイオ州で、ブルース・スプリングスティーンはペンシルベニア州で、ジェニファー・ロペスはフロリダ州で支持を表明しましたが、どの州もトランプが勝利しています。
過去にはディクシー・チックス（カントリーミュージック女性3人組バンド）が出身が同じテキサス州のブッシュ大統領に関して批判的なコメントをしました。怒ったブッシュ大統領支持者がディクシー・チックスのCDをブルドーザーで轢いたり、ラジオ放送出来ないように呼びかけたり、コンサートをボイコットするなどニュースになりました。（その後ディクシー・チックスは謝罪しています。）
上記の内容はこちらABCニュースの動画で見られます。
テイラーもカントリーミュージック出身で本格的にキャリアを築くためテネシー州に引っ越しています。テイラーもディクシー・チックスと同じように共和党支持者（オルトライトサイトなど）から少なからず非難を浴びています。 カントリーミュージックはアメリカではどこでも聴かれる音楽ですが、特に人気がある地域は政治保守層の支持基盤と重なります。テイラーはファンからの批判を受けることも承知で勇気ある声明を出したのでしょう。今度はオルトライトは掌を返してテイラーを攻撃するようなコラ写真を出しています。（ひどいですね！）
こうして議論と波乱を巻き起こしつつ、今年最大の米国政治イベント中間選挙は11月6日に投票、即日開票されます。
【2021年3月5日追記】米国では選挙が近づくと（特に若者に向けて）有名人が有権者登録を呼びかけることがよく行われます。詳しくはこちらの記事をごらんください。
参考：【解説】米議会選はトランプ政権にどう影響する 8つの図で見る中間選挙
Taylor Swift gets political
‘She just ended her career’: Taylor Swift’s political post sparks praise and fury
Taylor Swift hailed Aryan-goddess white supremacist groups claim secret Nazi
